身体化するメディア/メディア化する身体
西山哲郎, 谷本奈穂, 阿部勘一, 井上雅人, 加藤徹郎, 酒井健宏, 前田至剛, 水野麗
発行:風塵社
この版元の本一覧
A5判 256ページ 並製
定価:1,800円+税
ISBN978-4-7763-0078-6 C0036
近刊
奥付の初版発行年月:2018年10月
書店発売日:2018年10月18日

紹介

本書に納められたすべての論考は――理論も、メディア×身体も、ファッション×身体も、自傷×身体も――お手本のない中で、それぞれの研究者が自分なりに検討し、時には壁にぶつかり、格闘して著した記録である。本書に寄稿してくれた執筆者は、未踏の地に果敢に挑む探検家であり、道無き道を試行錯誤で歩んでいる者たちといえよう。

目次

第1部 理論編――身体をどうとらえるのか
 第1章 現代社会における身体と身体イメージ――「消費される」身体という観点から
 第2章 デジタル時代に至るまでの身体認識と主体性のメディア論的展開
第2部 事例研究――メディア編
 第3章 多層化する視覚メディアと身体――写真はいかに身体を動かしてきたか
 第4章 魔法にかかった身体――「ゴスロリ」系雑誌におけるボディ・イメージ
 第5章 老いという「病」/「本来」という幻想
第3部 事例研究――身体編
 第6章 ファッションと人間解放の神話――自由な身体に閉じ込められた自我と、その表出
 第7章 一九三〇年代、「体力」時代の身体――筋肉表象
 第8章 自傷する身体を語るメディア・伝えるメディア

前書きなど

本書は、主に社会学の視点から、現代人にとって身体とは何であるかを、身体とメディアの関わりを軸として考えるため、編纂されたものである。
人間が自らの身体について考えることは、古今東西、どこでも関心の的であり、興味を持たない人の方が珍しいテーマかもしれない。誰であれ、生きる上でいつかは自分の身体と向き合うことが避けられず、その過程で、自分なりの経験則を手に入れていることも少なくない。そうした経験則だけで疑問がすべて解消できれば結構なことだが、それで解決できないとなると、納得のいく裏づけがある主張に耳を傾けたくなる。われわれは、そういう人にも本書が役立って欲しいと願っている。
とはいえ、身体に関わる問題を考える上で、昨今は社会学に期待する人が少ないことも、われわれは自覚している。特に身体にトラブルが生じたときには、われわれでさえ、まずは医者に相談することは間違いない。しかし、医者に相談しても治らない話をするとき、あるいは身体に被害を受けているわけではなく、なぜか心に引っかかる疑問に答えを求めるときには、社会学や人文学が有用であると本書の寄稿者たちは考え、研究してきた。
身体に関する問題を考える際、物的な証拠やエビデンスを示してくれる自然科学は確かに安心できる。さらに医学的な知見ともなると、自分の身体を困らせてきた問題を解消し、治癒してくれるという期待が加わり、疑うことすら申し訳ない気がすることさえある。それに比べ、限られた人数の聞き取りやアンケート調査ぐらいしかできない社会学によって導かれた主張が疑わしく聞こえても仕方のないことだろう。しかしながら、何が問題かがはっきりしておらず、何を考えるべきか、何に価値があって、何がどうでもよいことなのかを考えたくなったときには、社会学や人文学こそ頼りになる。

版元から一言

身体は、「個人の所有物」でありながら、しかし「社会によって規定される物」であり、いわば「個人と社会をつなぐメディアそのもの」でもある。身体の理解なくして、個人も社会も理解できない。
しかし、身体に関わる社会学的研究はいまだ十分には進んではいない。ある意味では、未開拓とさえ言っていい領域である。私たちはもっと身体について真剣に考えるべきではないか? そう考えた研究者たちが集い、一緒に研究をしようという企画を立てた。身体に関する考察を、それこそ「手探り」で、煩悶しながら、それぞれに行ってきた。そして、何度か学会などを通じて切磋琢磨にも務めた結果を本書にまとめた。

関連書

教養としての現代社会入門
メディア・リテラシーの倫理学

著者プロフィール

西山哲郎(にしやま てつお)

大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程中退
関西大学人間健康学部教授、博士(人間科学)
主要業績:『近代スポーツ文化とはなにか』(世界思想社、2006年)、『市民学の挑戦――支えあう市民の公共空間を求めて』(共編著、梓出版社、2008年)、『科学化する日常の社会学』(編著、世界思想社、2013年)など

谷本奈穂(たにもと なほ)

大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了
関西大学総合情報学部教授、博士(人間科学)
主要業績:『美容整形と化粧の社会学』(新曜社、2008年)、『メディア文化を社会学する』(共編著、世界思想社、2009年)、『美容整形というコミュニケーション』(花伝社、2018年)など

阿部勘一(あべ かんいち)

成城大学経済学部教授
主要業績:「教養として身体を「学習」することの必要性――体育教育の批判的考察から」山本敦久編『身体と教養』ナカニシヤ出版、2016年
「現代社会におけるスポーツと身体イメージ」『成城大学社会イノベーション研究』12巻2号、2017年

井上雅人(いのうえ まさひと)

武庫川女子大学生活環境学部准教授
主要業績::『洋服と日本人――国民服というモード』廣済堂出版、2001年
『洋裁文化と日本のファッション』青弓社、2017年

加藤徹郎(かとう てつろう)

法政大学ほか非常勤講師
主要業績:「文芸的公共圏としてのレコード喫茶の生成過程――戦前の複製芸術文化を中心に」金井明人・土橋臣吾・津田正太郎編『メディア環境の物語と公共圏』法政大学出版局、2013年
「生活情報番組における原発震災の『差異』と『反復』」小林直毅編『原発震災のテレビアーカイブ』法政大学出版局、2018年

酒井健宏(さかい たけひろ)

一般社団法人名古屋シネマテーク
主要業績:「動画映像作品の制作授業を通して考慮すべき動画の基本構造について――その時間的要素と空間的要素に着目して」『名古屋芸術大学教職センター紀要』3号、2016年
「『装置』からの解放――第17回アートフィルム・フェスティバルにみる自由の探求」『芸術批評誌リア』30号、2013年

前田至剛(まえだ のりたか)

追手門学院大学社会学部准教授
主要業績:「ネット時代の自助活動――精神疾患を患う人々を事例として」遠藤英樹・松本健太郎・江藤茂博編『メディア文化論[第2版]』ナカニシヤ出版、2017年
「差別・排除を助長する/回避するインターネット」荻野昌弘編『文化・メディアが生み出す排除と解放』明石書店、2011年

水野麗(みずの れい)

元秋田工業専門学校専任講師
主要業績:「『女の子らしさ』と『かわいい』の逸脱――『ゴシック・ロリィタ』におけるジェンダー」『女性学年報』25巻、2004年
「『男の娘』への愛と傷と鏡」『ユリイカ』47巻13号、2015年



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