新学習指導要領を活かした音楽鑑賞法見つけよう・音楽の聴き方聴かせ方
山﨑 正彦:著
発行:スタイルノート
この版元の本一覧
A5判 128ページ 並製
定価:2,000円+税
ISBN978-4-7998-0104-8 C1037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2012年03月
書店発売日:2012年03月12日

紹介

音楽を聴く際の〈聴き方〉、そして学校教育の現場での〈聴かせ方〉について、その方法がわかりやすく解説されている。新学習指導要領で重視されている〔共通事項〕や〔言語活動〕を理解した音楽鑑賞の具体的な指導法を実例とともに紹介。小学校低学年から中学校まで実際の授業でも活用できる内容となっている。また、その考え方をもとに、学校教育とは直接に関係のない一般の人に向けても音楽の〈聴き方〉を提案している。著者が長年音楽鑑賞教育を研究し、また多数の共同研究授業などで得た成果であり、現場で活用できる1冊。

目次

第1章 音楽鑑賞は特別なことではない
1.誰もが音楽を聴いている
2.機器の発達で音楽の聴き方が変わった
3.カラオケで歌って、また聴いて
4.楽曲の魅力再発見
5.クラシック・ファンでなく音楽ファン
6.ボーダーレス化する音楽
7.クラシック・ファンといってもオールOKではない

第2章 学校で音楽鑑賞指導がおこなわれる意味
1.音楽鑑賞指導は学習指導要領に示されている
2.音楽鑑賞指導の歴史と意味
3.学ぶために音楽を聴くこと
4.学力とは何か
5.音楽鑑賞指導における学力 _聴き取れている_とは?
6.音楽鑑賞指導における学力 _感じ取れている_とは?
7._主観と客観とをつなぐ_とは

第3章 鑑賞機器と音楽鑑賞指導
1.音楽鑑賞指導の方法の変遷
2.生演奏とCD再生の違いは何か
3.CD鑑賞と映像鑑賞の違い
4.見なければ分からないときの映像鑑賞

第4章 音楽鑑賞指導方法
1.音楽を聴いてイメージを浮かべると言っても
2._客観的である_とは誰にも同じことが聴き取れ、分かること
3.音楽鑑賞指導は_楽曲の特徴を聴き取る_ことから始まる
4.「音はすぐに消えてしまうもの」だからこそ気を付けたい
5.同じ楽曲でも演奏者によって感じが変わる
6._1分で済むところを20 分かけて_ 音楽による鑑賞指導なのだから

第5章 音楽鑑賞指導の事例
小学校低学年 事例
 第1ステップ 木琴の音色を聴き取る
 第2ステップ 楽曲全体の流れのなかで木琴の音色を聴き取る
 第3ステップ 木琴の音色や演奏の様子を感じ取る
 第4ステップ 音楽の速さの違いを感じ取る
小学校高学年(中学校) 事例
 第1ステップ トルコ行進曲の基本リズムを知る
 第2ステップ 『トルコ行進曲』に使われている打楽器を聴き取る
 第3ステップ 『トルコ行進曲』(ピアノ・ソナタ版)を知る
 第4ステップ ピアノで表わそうとした打楽器の音を感じ取る
 第5ステップ 楽曲の雰囲気やよさを感じ取る
(小学校高学年)中学校 事例
 第1ステップ 何かが近付いてくる様子を表わして音楽であることを感じ取る
 第2ステップ 遠くから近付いてくる距離感を楽曲から感じ取る
 第3ステップ 楽曲全体の様子や情景を感じ取る
 第4ステップ 楽曲の雰囲気やよさを感じ取る
中学校 事例
 第1ステップ 交響曲と協奏曲の違いを聴き分ける
 第2ステップ いろいろな協奏曲があることを知る
 第3ステップ 協奏曲の演奏上の特徴を聴き取る
 第4ステップ 協奏曲ならではの雰囲気やよさを感じ取り、楽曲を聴き味わう

第6章 音楽鑑賞指導の基本を活かしてみては?
1.聴き方しだいで、もっと面白く音楽を聴くことができる
2.より多くの楽曲を聴くことができたら幸せ
3.いつかクラシック・ファンとなっているかもしれない
4.生演奏はお薦め
5.音楽はいつもすぐそこにある

前書きなど

 2011年3月11日、東日本大震災が発生し、多くの方が命を落とされました。そして、多くの方が家族や友人を失い、その悲しみや苦しみを抱えながら生きることや、生活の基盤を失って不安な思いを抱えて生きることを余儀なくされてしまいました。悲しい出来事です。

 大災害の様子が刻々と伝えられ、やがて、内外からの多くの復旧支援の様子が報道されている時、それをテレビ等で見ていた多くの音楽家が「自分には何もできない」「こんな時に音楽は無力だ」というような気持ちに陥り、自分の不甲斐なさを思い知らされたと後に語っていました。

 ところが、復旧が思うように進まないような状況であるにもかかわらず「こちらに歌いに来て欲しい」「コンサートを開いて欲しい」というような声が被災地から音楽家達の耳に徐々に届くようになったといいます。

 コンサートのひとつがテレビで報道されましたが、津波によって壊滅的な状況となった地に立ちすくみ、涙を流していた音楽家は、その後のコンサートで一心に音楽を奏でていました。その姿はとても印象的でしたが、流れてくるその音楽に涙しながら聴き入る被災地の人々の姿は、それ以上に私の心に強く迫ってきました。音楽の力を改めて実感するに十分だったのです。

 災害から復旧を遂げるには衣食住の再建が急務であるとよくいわれますが、「音楽を聴きたい」というような要請が思ったよりもずっと早くに被災地から届いたという事実に、正直、驚きました。思えば、「復旧、復興の過程で、必ず、音楽のようなものが力となる時が来る」と早くから断言していた方がいましたが、〈心の生き物〉である人間ならではの、その心の修復や再構築に音楽が欠かせないことを思い知ったような気がします。音楽に関わる仕事に就きながら、音楽のもつ、はかり知れない力をこれほどまでに意識したことは恥ずかしながらこれまではありませんでした。

 本書は、その音楽を〈聴く〉〈鑑賞する〉ということに焦点を当てたものです。多くの人が好みの音楽をもち、好きな時に好きなだけその音楽を聴いていることを第1章で述べていますし、音楽を聴くことで、どれほど人の心が安らぎ、癒されているかについても述べてみました。

 しかし、それは平時のことであって、今回のように、人が大災害に見舞われているときのことまではこの本を書き進めていた頃には全く想定していませんでした。それでも、先に述べたようなことが被災地では起こっていたのです。人間によって創作された音楽がその人間の想定をはるかに超えたところで一人歩きをしているかのようで、その大きな存在感を実感せざるをえません。嬉しいときも悲しいときも人は音楽を欲し、これからもずっと聴き続けていくことでしょう。

版元から一言

音楽の授業で「音楽鑑賞」をした経験のある方は多いはずです。古くから、学習指導要領には音楽鑑賞の授業について定めがありました。しかし、実際には音楽を聴いて感想文を書いて終わり、というケースが多かったかもしれません。また音楽鑑賞が行われないケースもあったかもしれません。しかし、今後はますます学習指導要領に沿った授業の展開が求められそうです。



2011年より順次実施されている新学習指導要領。全教科に〔言語活動〕の充実がうたわれています。音楽科も例外ではありません。そして、音楽科の学習内容は大きく分けて「表現」と「鑑賞」の2本柱になっています。加えて、音楽科全般における〔共通事項〕も重視されています。

音楽鑑賞の指導において、その結果〔言語活動〕の充実や〔共通事項〕の実現がどう達成されるのか。そして、どのように指導をしたらよいのか。本書では小学校低学年から中学校まで、その具体的な方法が紹介されています。

また、なぜ音楽鑑賞を授業で行うのか。なぜその曲を授業で使用するのか。「なんとなく」ではなく、意味ある音楽鑑賞授業を行うヒントが書かれています。平易な文体でわかりやすく鑑賞授業を解説した実践的な本です。



音楽の先生のみならず、クラシック音楽に興味はあるけどあまり聴いたことの無い方、音楽の指導をしなくてはならないけれどクラシックにはなじみが無いという方にも、音楽鑑賞の授業法をヒントにクラシック音楽に触れるきっかけ作りにできる内容にもなっています。

著者は、長年にわたり音楽鑑賞教育を研究。そして多くの現場の先生方と共に研究を重ねてきました。この本はその成果にもとづいた成果となっています。

著者プロフィール

山﨑 正彦(ヤマザキ マサヒコ)

1957年長野県生まれ。中学校、高等学校、小学校の教員を経てから武蔵野音楽大学大学院音楽研究科に入学し音楽教育学を専攻。修了後、武蔵野音楽大学音楽教育学科講師として後進の指導にあたり現在に至る。主な研究領域は教員養成と音楽鑑賞指導。これまでに小学1年生から大学生までのすべての学年での教育経験があり、現在、幼児教育現場における指導アドバイサーもおこなっている。著書に『金賞よりも大切なこと』(スタイルノート)、共著に『音楽鑑賞の指導法“再発見”』(音楽鑑賞教育振興会)がある。



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